■概要 2006年9月5日〜17日のアメリカ・コロラド訪問は「草の根交流サミット」の一環として参加することで実現しました。ダンススペースからは総勢34名が参加。ダンスを通じての文化交流をはかろうという企画で2つのメインイベントが催されました。1つはコシャレとのコラボレーション、もう1つはボルダー私立図書館でのパフォーマンスです。コシャレはコロラド州のラ・ハンタという町に拠点を置く、子どもが中心のパフォーマンスグループです。彼らはアメリカン・インディアンの伝統的なダンスを修得し、全米各地を公演してその活動資金を集めています。ボルダーではとてもきれいな町にある図書館の併設ホールでパフォーマンスをすることができました。現地のダンサーとのコラボレーションもすることができ、有意義な時間を持つことができました。 ■企画書(コシャレとのコラボレーション) 1. はじめに ダンスは言葉のいらない世界共通の身体言語であると同時にそれぞれの文化と非常に密接に関係のあるとても不思議で興味深い表現形式です。コシャレはダンスを通して人間教育を行っていると聞いています。ダンススペースでもダンステクニックだけではない、何かを学んでほしいと常に考えながら作品を作って参りました。その二つのグループが同じテーマを違う方向から創作していった時、コシャレとダンススペースでは考え方、創り方、表現方法など、何が違って、何が共通しているのかを一緒に考え、体験できるのではないかと思います。そしてそういう時間を共有することによって、今後の活動の広がりへとつなげて行ければと思い、以下をご提案します。 2. 目的 風土に潜む地域文化とダンススタイルの交換 3. テーマ 感謝する心 4. これらの目的とテーマを選んだ理由 私たちの住む山形県は農業が盛んで、高く険しい山と「端山」と呼ばれるなだらかな山に囲まれた地形をなしています。出羽三山(月山、羽黒山、湯殿山)は有名で世界中から観光客が訪れます。特に湯殿山は自然崇拝と祖霊崇拝という原始信仰のスタイルを今も持ち続けています。昔は端山に死者を葬り、その死者は数年の間は家族を見守っているのですが、家族の悲しみも薄れてきた頃に高い山へと上り、最終的には天に昇るといわれてきました。これが山岳信仰というものです。また「草木塔」という石碑も県内のあちらこちらのお寺に見られます。一木一草のなかに神性をみる思想です。草木を大切に思う気持ちや、自然に対する畏敬心が込められています。高齢の方などは、今でも山や石碑の前に立つと感謝の気持ちから合掌する姿が見受けられます。山形はこのように信仰心の厚い土地柄といえます。 コシャレはラ・ハンタという街に住み、何に感謝して生きているのか、それをどのように表現するのかを知りたいと思い、「感謝する心」というテーマを選んでみました。現代の科学文明はこれらの社会風土や地域遺産に鉄やガラス、コンクリートのような「硬い思想」という覆いをかけてしまいました。いま、精神文化に目を向けた時、硬い思想の覆いを破り、風土に眠る精神を掘り起こしてみたいと思いました。私たちの命は祖先から流れてきた命の流れの中にあり、その命の流れを支えているのが自然の空気や水、動物や植物だとすれば、それらを崇拝する気持ちはいまの時代を生きる私たちにとって大切なことではないでしょうか。そして改めて、いま生かされていることに感謝したいと思うのです。 5. 3つのキーワード このように考えるうちに、ある3つのキーワードがふと私のこころにわき上がってきました。 (a)昔から変わらず、我々の周りに、そして我々の中に存在するもの (b)時とともに姿を変えていくもの、あるいは我々が変えてしまったもの (c)変わらず存在し続けるものと、変化していくものを結びつけるもの もし可能であれば、コシャレの方にも「何に生かされ、何に感謝しているのか」をお考えになってもらって「感謝する心」またはこの「3つのキーワード」に関する作品を創作して頂き、お互いに発表し合い、文化の交換ができればと思います。 また、ワークショップでは(c)をテーマにお互いのメンバーを交換して、新たに数分間の作品を創り、お互いの作品の中に組み入れたら素敵なコラボレーションになると考えました。 6. 最後に 踊り続けること、また踊りを創るということは単にダンステクニックを伝えることだけではないと思っています。ダンススペースは子ども約40名、大人約30名の小さな集団ではありますが、大人は作品意図を自分なりに理解し、咀嚼し、表現しています。それが、各人の個性となって集団作品が作り上げられます。ひとりひとりが想いを織るように踊り、それがつながっていく様はとても幻想的で振付家の予想をはるかに上回るハプニングが起こります。こんなハッとするような表現を子どもたちは敏感に感じ取っています。また、子どもたちの純粋さを見ては、大人たちも初心に戻ったり、自分を省みたりという時間を持っています。子どもも大人もお互い不可欠な存在なのです。感性というものはそうやって創られていくのではないでしょうか。ただ感じること、そして存在に感謝すること。 この企画を成功させることによってメンバーひとりひとりが自分の存在を再確認し、今の自分をじっくりと見つめ、肯定することができると考えています。また、私たち指導者もお互いのダンス思想が生まれてきた理由をかいま見ることができるかもしれません。二つのグループの子どもたちの成長と作り手の成長を願い、何よりもダンスを楽しみたいと思い、この企画をご提案します。 ■コシャレのリーダーからの手紙 加藤由美さんへ あなたのダンサーたちの訪問、一緒に過ごす時間を楽しみにしています。互いのダンサーを交換すること、そしてともに一つの作品を作ることで何ができるかを知りたいと思います。また、もしダンススペースの方が興味をお持ちなら、ちょっとした衣装を一緒に作って、それを是非持ち帰って頂こうとも思っています。 わたしたちが踊るダンスのほとんどはプエブロ族に由来し、それは崇拝や感謝を表すものです。これらのいくつかは、聖なるものに対する祈りや贖罪といった「感謝のこころ」を表すという役割を持っています。多くのダンスは作物に恵みを与える雨を求めるため、また雨に感謝するために踊られ、雨の恵みを与えられた作物はわれわれに恵みを与えてくれます。これらの踊りを踊るために正装をするのは不可欠です。というのも、衣装のアイテムやデザインは雨や祈りという行為に関係するものを模しているからです。たとえば母なる大地を叩く雨の音を表現するために、ガラガラとなる道具を使う、といったように。これらの思想はわたしたちが踊るプエブロ族のダンスからもたらされたものです。先にも述べたように、衣装やダンスを通してわれわれが感謝するものを模することは、われわれの感謝の表し方です。感謝を表すためにわれわれが踊るダンスのいくつかを以下に挙げることにします。その説明にはわたしたちがどうやってダンスを通じて表現するかということも書くことにします。 イーグルダンス(ワシの踊り): コシャレは多くの部族のイーグルダンスを踊ります。ネイティブアメリカンはワシを愛しています。ワシは人びとの祈りをその羽に集め、それを雲の彼方への偉大なるスピリットへと運んでくれると信じられています。そしてワシは天からの祝福を人びとに持って返ってきてくれるのです。このためにわたしたちが踊る多くのダンスではワシの羽を必要とします。イーグルダンスではダンサーはワシの姿をまねるためにワシの羽とワシの頭の形をしたものを身につけます。このダンスでダンサーは、空を舞い人びとの祈りを集めるワシの姿を表現します。 フープダンス(輪の踊り): このダンスは一人、また時には複数人で踊られます。ダンサーは5つの輪を持ち、踊りの中でそれらを組み合わせ、いくつかの異なったものを表現します。それは時には、雲を呼び種をまき散らしてくれる「つむじ風」であり、時には花粉を運んでくれる「蝶」であり、そして先に説明した「ワシ」であったりします。この輪は生命が満ち満ちていることを表しています。ダンサーがこれらの輪をすり抜ける動きは、そのダンサーが人生を上手く切り抜けられるということを象徴しています。 ファイヤーフープ(火輪の踊り): このダンスは偉大なる生命の創造者、太陽への感謝を表します。 このダンスでダンサーは火のついた輪を持ち、それは太陽を表します。 バッファローダンス: このダンスは動物のスピリットへ感謝するためにわたしたちが踊る、多くのアニマルダンスのひとつです。このダンスは、わたしたちが生き抜くために彼らの命を奪ってしまうことを、彼らのスピリットに詫びるために踊ります。このダンスでは、男性ダンサーが動物の一部を身にまとい、動物の動きをダンスで表現します。それぞれの男性ダンサーはプエブロ族の伝統的な衣装を身にまとった女性に付き添われます。女性のダンスは男性のものと似ていますが、よりしとやかなものです。その他のアニマルダンスにはターキーダンス(七面鳥)などがあります。 ベルトダンス: 家族への敬意を表すために踊ります。このダンスでは、6名のダンサーからなるグループそれぞれが、3つのベルトを使います。たとえどんなに離れていようともどこにいようとも、わたしたちは家族の人たち、そしてその土地に、そしてその家に代々固く結ばれています。このダンスでは結び合わされたベルトで表現されます。 コーンダンス: このダンスは時には収穫のダンスとして踊られます。雨と実りを求め、そしてそれらに感謝します。これと同じような意味を持つ他の2つのダンスは、レインボーダンスとサンダンスです。これらのダンスははっきりとした違いがあり、このダンスで使われる衣装は重要な役割を持っています。 マウンテンスピリット(山々のスピリット): このダンスはアパッチ族から学んだものです。少女が女性へと変わるときに踊られます。仮面をし、大きな冠を戴いた精霊の姿をした5人の少女のダンサーが少女たちに祝福を与えにきます。 これらはわれわれが感謝を表すために踊るダンスのほんのいくつかです。先にも述べましたが、これらのほとんどはプエブロ族に由来するものです。そのダンスからも分かるように、彼らは友好的で、農耕にその多くを依存していました。草原インディアンに由来する、戦争に関連した感謝を表すダンスはほとんどありません。この資料がわたしたちが踊るダンスの内容と、引いては、どのように「感謝する心」というテーマに結びついていくかを知る何らかの資料になることを期待しています。 愛を込めて Jeremy Manyik(Koshare Dancers) |